住宅密集地にて宅地を選ぶ際にも、水の問題を意識する必要がある
最近の日本における災害傾向を見てみると、山間部や丘陵地等での住宅が大きな災害に巻き込まれることが多くなっています。
昔から日本では大きな河川の氾濫や土手・堤防の決壊、それに伴う床上浸水及び床下浸水の被害が河川沿いの住宅には多くありました。ですので当然、河川近くに住宅を建てると水害にみまわれるリスクも高いと考えられていました。最近では治水技術の発達により河川の氾濫は昔よりも減りましたが、それでも水害を恐れて丘陵地や山の中腹など、海抜が高めの場所を宅地として選ぶ人は少なくありません。
しかし近年では、気候変動の影響か、観測史上の最高記録をぬり返る集中豪雨や台風などの増加に伴い、上述のような丘陵地にて災害(水害)が発生する事例が増えてきており、特に丘陵地のふもと等に位置している住宅は土砂災害などにさらされるリスクが高くなっています。
平成26年8月20日に広島市で発生した土砂災害はいまだ人々の記憶に新しく、起伏の多い土壌をもつ日本に住むわたしたちに警鐘を鳴らしています
昨年のこのニュースを見て、住宅が山の近くにあることに不安をおぼえた方も多いことかと思います。
しかし土砂災害が起こるような記録的な集中豪雨ではなかったとしても、水害は思わぬ形で発生します。
「丘陵地」といっても意外と定義は曖昧ですが、例えばなだらかな丘のふもとにある住宅で、道路の舗装がなされていて下水道も側溝も整備されていたとします。大雨の時に降った雨水はそれほど時間を経ずに丘陵地上部から低地に向かって流れていきます。
近年遭遇することが珍しくなくなったゲリラ豪雨などでは、こういった丘陵地のふもとでは雨水が短時間に驚異的な勢いで増水し、側溝や下水道で処理しきれなくなった雨水は道路上に冠水します。
そうなってきますと土地の高低差が僅かであったとしても、冠水した水は低くなっている方へ流入していき、場合によってはわたしたちが住む宅地内にも流れ込んでくるのです。
魅力的な半地下ガレージにもリスクが潜む
都心にかぎらず、密集した住宅地では半地下ガレージが多く見受けられます。建蔽率の問題にも効果的で宅地スペースの活用効率の高い半地下ガレージですが、その床面は下水道管の埋設レベルより高い位置にくることも多く、配水管が直接下水道管につながっていることもあります。そのため、「排水のためのポンプアップ設備」を設置しないことでコスト削減を図ることも可能ですが、冠水時にはこれが落とし穴となってしまいます。
先程説明したような宅地に流れ込んでくる冠水が発生した場合に、当然、雨水は半地下ガレージにも流れ込んでくるのですが、排水設備の容量を超えてしまうとガレージに雨水が溜まっていき、最悪の場合車が水没する恐れもあります。
また道路からの冠水だけではなく、処理しきれなくなった下水管の水がガレージ底部の排水口から逆流してくるパターンもあります。
半地下ガレージでの水害対策
ですので半地下ガレージへの雨水の流入を防ぐ「土嚢(どのう)」の備えは必須であり、余裕があるならばポンプアップ設備も設置するにこしたことはありません。ポンプアップ設備を設置する費用がない場合は、ホームセンターで水中ポンプを購入しておくことをお勧めします。水中ポンプは低容量のものであれば一万円程度から販売されていますので、土嚢と組み合わせることで低予算での対策が可能になります。
このように海にも河川にも近くはない住宅が、思わぬ水害に巻き込まれてしまうこともありますので、宅地選定の際にはこの様な視点でも注意が必要となります。